授業の目的 【日本語】 | | 租税法律関係の基本的な考え方(いわゆる税法総論)と、日本の税目でもっとも重要で、かつほとんどの勤労者が必ずその租税法律関係の当事者となる所得税について取り上げる。講義形式だが、予習復習を重視し、教員からの問いかけとそれに対する受講生の答えというソクラテス・メソッドを大いに用いる。理解を深めるため、簿記や計算問題も積極的に取り上げる。
*本授業は、Zoomを使用した同時双方向遠隔授業形式で行う予定である。詳細は追って指示する。 |
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授業の目的 【英語】 | | |
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到達目標 【日本語】 | | 税法は、他の法分野と比較してその条文や裁判例、行政上の指針などが格別多く、またその構造が複雑であるが故に、法律の専門家である弁護士でさえもこれに精通する者が少ない。しかし、租税法律関係は人間の日常生活で避けて通ることはできず、またその法律関係を巡るトラブルも非常に多いため、税法に関する法的援助の需要は大きい。税法の専門家としては税理士がいるが、税理士資格を取得するために、法的思考能力や訴訟手続等の知識が要求されておらず、納税者の権利救済を訴訟等の手続を通じて行うための実効性に欠ける側面は否定できない。このような現状に鑑み、この授業では少なくとも税理士とスムースにコミュニケーションを取ることができ、税務訴訟を担当できる程度の所得税の基本を習得することを達成目標とする。具体的には、以下の通りである。 (1)租税法律関係の基本的概念及び所得税の基礎について体系的な知識を習得する。 (2)所得税法における主たる論点の理解とそれを解決するための思考方法を身につける。 (3)新たな税法上の問題点を発見する能力と、その新たな問題が生じたときにそれを解決するための調査報告能力(表現力を含む)を涵養する。 |
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到達目標 【英語】 | | |
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授業の内容や構成 | | 講義計画
【第1回】4月22日 租税と税法
講義内容:今回は、租税の意義と分類、税法の意義とその法源について学ぶ。具体的には、税法の違憲立法審査、法源性の一般理論と通達の法源性について、適宜判例を参照する。
授業時間外の学習活動:事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。また、課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第2回】5月13日 租税法律主義と租税平等主義(1)
講義内容:今回は、租税法律主義の内容を学ぶ。具体的には、租税法律主義の意義、課税要件法定主義と委任立法、課税要件明確主義と不確定概念、合法性の原則、租税法律不遡及の原則について、判例を中心に取り上げる。さらに通達課税の問題についても取り上げる。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第3回】5月20日 租税法律主義と租税平等主義(2)
講義内容:今回は、租税平等主義の内容を学ぶ。具体的には、立法上の平等原則、執行上の平等原則につき、判例を中心に取り上げる。その際、租税特別措置の存在について触れる。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第4回】5月27日 税法の解釈・適用(1)
講義内容:今回は、税法解釈のあり方を確認し、借用概念・信義測の適用についていくつかの判例を参考にして検討を行った後、仮装行為、取消うべき行為・無効の行為と違法所得課税の問題、租税回避とその否認に関する基礎理論を、学説中心に概観する。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第5回】6月3日 所得税法総論(1)
講義内容:今回は、(1)所得概念、特に包括的所得概念とは何か、 実現主義とはどのようなものかまたそれはなぜ採用されているのか、帰属所得とは何か、所得課税と消費課税の差異、と(2)所得税の税額算定プロセスを学ぶ。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第6回】6月10日 所得税法総論(2)
講義内容:今回は、(1)収入金額、特に所得計算上収入金額の概念が持つ意味と、(2)非課税、特に9条列挙項目の種類とその立法趣旨及びフリンジ・ベネフィットの取扱いと課税するかしないかの基準について学んでみよう。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第7回】6月17日 所得税法総論(3)
講義内容:今回は、(1)経費控除の原則、特にそれが会計上の費用控除の概念・取扱と密接に関係していること、(2)経費と消費の区別、(3)控除できない経費を学んでみよう。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第8回】6月24日 所得税法総論(4)
講義内容:今回は、(1)実現主義の内容、特に権利確定主義と管理支配基準の適用、(2)実現主義の例外、特にみなし譲渡と取得費引き継ぎ、原則的課税の計算方法と適用及び(3)譲渡所得課税が行われる譲渡とは何か、を学ぶ。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第9回】7月1日 利子所得/配当所得
講義内容:今回は、(1)利子所得とはどのような所得種類か、利子所得は所得税法本法及び租税特別措置法においてどのように課税されているのかと、(2)配当所得とはどのような所得種類か、配当所得は所得税法本法及び租税特別措置法においてどのように課税されているのか、配当控除とインテグレーションの関係、を学んでみよう。余裕があれば、旧2項配当にも言及する。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第10回】7月8日 不動産所得/事業所得
講義内容:今回は、(1)不動産所得とはどのような所得種類か、 他の所得種類とはどのように区別されるか、不動産所得内部の分類、不動産所得の計算方法と、(2)事業所得とはどのような所得種類か、 他の所得種類とはどのように区別されるか、事業所得の計算方法について学ぶ。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第11回】7月15日 給与所得/退職所得/山林所得
講義内容:今回は、(1)給与所得とはどのような所得種類か、他の所得種類とはどのように区別されるか、給与所得の計算方法と給与所得控除の制度趣旨と、(2)退職所得とはどのような所得種類か、他の所得種類とはどのように区別されるか、一定期間の勤務後に退職しすぐ同一使用者に雇用される場合の退職金は退職所得になるのか、退職所得の計算方法、(3)山林所得とはどのような所得種類か、 山林所得の計算方法について学ぶ。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第12回】7月22日 譲渡所得/一時所得/雑所得
講義内容:今回は、(1)譲渡所得とはどのような所得種類か、その本質とは何かを再確認しながら、他の所得種類とはどのように区別されるか、譲渡所得の計算方法、(2)一時所得とはどのような所得種類か、他の所得種類とはどのように区別されるか、一時所得の計算方法とその問題点、(3)雑所得とはどのような所得種類か、 雑所得の計算方法、私的年金の原価回収の問題その他雑所得と分類される場合の問題を学んでみよう。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第13回】7月29日 損失
講義内容:今回は、三種類の損失とはどのようなものか、損失控除の根拠規定としては、どのようなものがあるか、「生活に通常必要な動産」及び「生活に通常必要でない資産」の所得税法上の取り扱いを学んでみよう。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第14回】8月5日 人的帰属
講義内容:今回は、課税単位と累進税制の関係、所得の分散とそれに対する対処規定、実質所得者課税の原則について学ぶ。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。課題を提出する場合には、次週授業日までに行うこと。
【第15回】8月12日 税法の解釈・適用(2)
講義内容:今回は、租税回避の構造、租税回避と目的論的解釈、私法上の法律構成による否認、租税回避の販売という現象について理解する。
授業時間外の学習活動:冒頭に小テストを行うので(前回授業内容から出題)、十分に復習しておく。また、事前配布のレジュメ及び教科書該当部分(レジュメに記載)を読み、予習問題をこなしておく。
【第16回】 学期末試験・講評
講義内容:期末試験を実施し、答案について個別の講評を行う。
授業時間外の学習活動:講義全体について、よく復習しておくこと。
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履修条件・関連する科目 | | 履修条件はないが、税法への理解を深めるため、春休みに日商簿記3級程度の簿記の知識を身につけておくことを推奨する(初学者でも2週間程度で身につけることができる)。そのための簿記の教科書は何でもよいが、例えば渡部裕恒他『検定簿記講義3級・商業簿記[2020年度版]』(中央経済社、2020年)とその問題集である同他『検定簿記ワークブック3級・商業簿記[2020年度版]』(同)がある。それほど高額なものではないので、書店で自分にあったものを選んで購入した方がよいであろう。 |
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成績評価の方法と基準 | | 期末試験50%(方法未定)、毎時行われる小テスト30%(CANVAS上の「クイズ」を使用)、毎時(ただし選択制)課される簡単な課題(レポート)15%(CANVAS上の「課題」を利用)、授業への参加度5%(Zoomを使った質疑応答)の割合で評価する。期末試験、小テスト及び課題は、CANVAS上で即時採点ないしコメント付きで結果を明らかにする。詳細については初回の授業で説明する。
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教科書・テキスト | | 岡村忠生他『租税法(第2版)』(有斐閣、2020年)。
まだ教科書を購入していない場合は、宅配による販売(Amazonなど)を利用することを強く推奨する。なお、生協の行う宅配による教科書販売については、さしあたり下記のページを参照すること。
http://www.nucoop.jp/book/news_2/news_detail_2487.html (外部サイトにリンクしています。)外部サイトにリンクしています。(法科大学院生もこの宅配販売システムを利用できることは確認済み。ただし配達が遅くなる可能性がある)。 |
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参考書 | | CANVASの「ページ」欄にて、毎回レジュメを事前配布する。六法は『租税法判例六法(第3版)』(有斐閣)あるいは『判例六法プロフェッショナル』(有斐閣)を指定する(それに載っていない情報はこちらで用意する)。『税務六法(法令編)』(ぎょうせい)を使用したり、e-govなどインターネットにある条文を自分で加工して自前の六法を作ってもよい。
参考書を買わないですむよう、十分な量の情報を記載したレジュメを用意するが、なお参考書を必要とする場合には、清永敬次『税法(新装版)』(ミネルヴァ書房、2013年)、谷口勢津夫『税法基本講義(第6版)』(弘文堂、2018年)、金子宏『租税法(第23版)』(弘文堂、2019年)、佐藤英明『スタンダード所得税法(第2版補正2版)』(弘文堂、2020年)、『租税判例百選(第6版)』(2016年、有斐閣)をお勧めする。問題集等も含め、詳細は初回授業時に説明を行う。
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課外学習等(授業時間外学習の指示) | | 該当日の「授業時間外の学習活動」に従って行うこと。 |
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注意事項 | | 税法ないし税は、日常的な取引はもちろん、財産に関する犯罪や離婚時の財産分与、遺産分割など、民刑事の様々な問題を扱う上で必ず考慮しなければならない法的ないし経済的ファクターである。司法試験の選択科目云々にかかわらず、将来の実務のことを考え、ぜひ受講をお薦めしたい。
名古屋大学におけるCOVID-19問題についての下記の指針を参照すること(とくに「5.学生の入構制限」に注意)。
http://www.law.nagoya-u.ac.jp/_userdata/20200409shishin2.pdf
(なお、「方針」における警戒カテゴリー・レベルは更新される—上記のものはあくまで4月9日現在のものである—ので、名古屋大学HP(トップページ)にある「新型コロナウィルス感染症(COVID‐19)における名古屋大学の活動方針」を随時確認するようにすること。)
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授業開講形態等 | | |
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遠隔授業(オンデマンド型)で行う場合の追加措置 | | |
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