学部・大学院区分法・専学
時間割コード9363300
科目区分展開・先端科目
Advanced/Applied Courses
科目名 【日本語】国際私法Ⅱ
科目名 【英語】Private International LawⅡ
担当教員 【日本語】横溝 大 ○
担当教員 【英語】YOKOMIZO Dai ○
単位数2
開講期・開講時間帯春 木曜日 2時限
Spring Thu 2
対象学年1年
1
授業形態演習
Lecture


授業の目的 【日本語】
経済のボーダーレス化に従い私人の国際的活動は増加の一途を辿り、それに伴い私人間の(或いは私人と国家間の)国際的法律関係に関する問題も多様化且つ複雑化しつつある。海外での交通事故、国際的な自動車の盗難、独占禁止法や通信法の域外適用また各国法規の抵触、国有化・収用措置や資産凍結措置の国際取引への介入、多国籍企業の複数国での大型倒産、アメリカ懲罰的損害賠償判決の我が国での執行の可否等、そういった問題の例としては枚挙に暇がない。また、このような財産関係事件に限らず、身分関係事件においても、離婚の国際裁判管轄、子供の引渡を命じた外国判決の我が国での執行の可否等、国際的紛争事例は夥しい。 このような複雑な国際的法律関係を規律する法律が抵触法(広義の国際私法)である。本講義では、このうち外国法適用制度(準拠法選択規則)の各論につき、その基本的知識を提供し、また、重要裁判例を中心に、判決の意義や位置付け、またその問題点等について議論する。 最初に、毎回出される課題(各テーマの応用的な下級審裁判例)を基に前回の復習を行った後、当日のテーマについて基本事項の確認的説明を行った上で、判決についての議論に入る。受講者には、主要参考文献等により毎回のテーマについて予習を行い、テーマとなる裁判例及び指定された評釈を読んで来ること、また、毎回出される課題について考えて来ることが要求される。
授業の目的 【英語】
到達目標 【日本語】
(1)外国法適用制度(準拠法選択規則)の各論についての基礎的知識を習得すること。 (2)外国法適用制度(準拠法選択規則)に関する裁判例・学説につき、十分に理解し、また問題点を批判することが出来るようになること。 (3)今後生じ得る国際民事紛争に関し、抵触法上どのような点が問題となるか、また、どのような結論が導かれるかを考えることが出来るようになること。
到達目標 【英語】
授業の内容や構成
1

婚姻 (4月23日)

婚姻の成立及び効力に関する通則法の基本的枠組を説明した上で、水戸家審平成 28 ・ 12 ・ 16 (判タ 1439 号 251 頁)等、幾つかの具体的問題について議論する。

・水戸家審平成 28 ・ 12 ・ 16 (判タ 1439 号 251 頁)
・植松真生・戸籍時報782号52頁


2

離婚 (4月30日→休講:5月1日)

離婚に伴う親権者指定等に関するさいたま家判平成 29 ・ 11 ・ 28 及びその控訴審判決である東京高判平成 30 ・ 6 ・ 20 を中心に、幾つかの具体的問題について議論する。

・さいたま家判平成 29 ・ 11 ・ 28 ( D1-Law28263409 〔平 27 年(家ホ) 304 号〕)及び東京高判平成 30 ・ 6 ・ 20 ( D1-Law28263411 〔平 30 (ネ) 46 号〕


3

実親子関係(5月7日)

親子関係に関する28条から37条の基本的枠組とその問題点について確認した上で、実親子関係の存在確認請求に関する東京家立川支判平成 28 ・ 8 ・ 18 ( D1-Law28264858 〔平 26 (家ホ) 180 号〕)及びその控訴審判決たる東京高判平成30年10月18日(D1-Law28264861[平28(ネ)4525号])を中心に、幾つかの具体的論点について議論する。

・東京家立川支判平成 28 ・ 8 ・ 18 ( D1-Law28264858 〔平 26 (家ホ) 180 号〕)
・東京高判平成30年10月18日(D1-Law28264861[平28(ネ)4525号])


4

養親子関係 (5月14日)

養親子関係の準拠法につき、名古屋家審平成 26 ・ 7 ・ 17 を中心に議論する。

・名古屋家審平成 26 ・ 7 ・ 17 (判タ 1420 号 396 頁)


5

相続 (5月21日)

損害賠償債務の相続や相続財産の管理についての準拠法等、相続に関する幾つかの具体的論点について、東京地判平成26・7・8を中心に議論する。

・東京地判平成26・7・8(判タ1415号283頁)
・渡辺惺之・戸籍時報747号35頁
・嶋拓哉・ジュリ1485号139頁


6

自然人・法人 (5月28日

自然人に関する通則法4条~6条、及び法人の従属法に関する設立準拠法主義と本拠地法主義との対立を確認した上で、東京地判平成 29 ・ 1 ・ 13 を題材に、法人格否認の準拠法について議論する。

・東京地判平成 29 ・ 1 ・ 13 ( D1-Law29038270 〔平(ワ) 19090 号〕) ・神作裕之・百選48頁


7

契約(1) (6月4日)

当事者自治の原則の根拠、通則法における基本的規定を確認した上で、特徴的給付の理論につき、東京地判平成28・2・25(平27(ワ)21195号)2016WLJPCA02258018を中心に議論する。

[参考] ・北澤安紀「国際契約の準拠法」須網=道垣内編『国際ビジネスと法』(2009年)119頁


8

契約(2) (6月11日)

通則法において新設された消費者契約・労働契約に関する特則の内容、趣旨、問題点を確認した上で、東京地判平成28・5・20(平成25年(ワ)第28812号)LEX/DB2554305について議論する。

・山川隆一・国際私法判例百選66頁 [参考] ・西谷裕子・国際私法年報9号29頁


9

不法行為等 (6月18日)

不法行為等に関するこれまでの議論と通則法の新たな枠組につき確認した上で、東京地判令和元年9月4日(平26(ワ)19860号)2019WLJPCA09048001を題材に議論する。

・東京地判令和元・9・4(平26(ワ)19860号)2019WLJPCA09048001


10

債権譲渡等・物権 (6月25日)

債権譲渡に関する通則法23条がどのように成立したのか、その成立の経緯を確認する。また、物権に関する通則法13条の趣旨を確認し、常時移動する物についてどのように考えるべきか、最判平成14年10月29日を中心に議論する。

・LS国際私法Unit18 ・最判平成14年10月29日民集56巻8号1964頁 ・尾島明・最高裁判所判例解説民事篇平成14年度907頁 ・神前禎・国際私法判例百選54頁


11

知的財産権 (7月2日)

パリ条約・ベルヌ条約・TRIPs協定を中心とした国際的枠組とその前提となる属地主義の原則を確認した上で、外国特許権に基づく請求に関する最判平成14年9月26日を中心に、あるべき処理枠組について議論する。

・LS国際私法Unit19 ・民集56巻7号1551頁 ・高部眞規子・最高裁判所判例解説民事篇平成14年度687頁 ・渡辺惺之・私法判例リマークス(法律時報別冊)28号154頁


12

統一法と抵触法 (7月9日)

国際取引において用いられている様々な統一法型条約のうち代表的なものを確認しつつ、ワルソー条約を巡る議論を題材に、条約と準拠法選択規則のあるべき関係について議論する。

・LS国際私法Unit33 ・高桑昭「国際私法と統一私法」国際私法の争点(新版)15頁 ・石黒一憲『現代国際私法上』40頁以下 [参考] ・石黒一憲「統一法による国際私法の排除とその限界」海法会誌53巻3頁


13

国際売買 (7月16日)

国際売買の基本的枠組について確認しつつ、神戸地判昭和37年11月10日や海外の事例を題材に、国際売買を巡る国際民事紛争について考える。

・LS国際私法Unit34 ・神戸地判昭和37年11月10日下民集13巻11号2293頁 ・石原全・商法〔総則・商行為〕判例百選[第4版]138頁 ・浜田一男・海事判例百選[増補版]194頁


14

国際運送 (7月30日)

船荷証券、国際海上物品運送法、モントリオール条約等、国際運送に関する基本的枠組を確認した上で、準拠法選択の問題につき、東京地判平成13年5月28日を中心に議論する。

・LS国際私法Unit35 ・東京地判平成13年5月28日判タ1093号174頁 ・山手正史・国際私法判例百選〔補正版〕62頁


15

国際支払(8月6日)

信用状取引の基本的仕組について確認しつつ、信用状を巡る準拠法選択につき、東京地判平成15年9月26日を中心に議論する。

・LS国際私法Unit36 ・東京地判平成15年9月26日金融法務事情1706号40頁 ・森下哲朗・平成16年重要判例解説(ジュリ1291号)292頁 ・杉江徹「信用状の準拠法」国際私法の争点(新版)134頁


履修条件・関連する科目
国際民事紛争の全体像を把握するためには、国際私法Iを履修していることが望ましい。
成績評価の方法と基準
平常点及び期末試験による(平常点20点、期末試験80点)。平常点では、授業中の発言に見られる到達目標(1)及び(2)の点の理解の程度により評価する。尚、理由なく欠席した場合には減点する(4回以上欠席した場合には単位を認めない)。期末試験においては、(1)及び(2)の点は固より、(3)についても評価するため、授業で採り上げなかった応用的事例や論点についても批判的に論評する力が試される。
教科書・テキスト
扱う裁判例は、基本的には道垣内正人=櫻田嘉章編『ロースクール国際私法・国際民事手続法〔第3版〕』(有斐閣・2012年)に掲載されている。但し、判決全文を読んで来ることが望ましい。
参考書
・中西康=北澤安紀=林貴美=横溝大『国際私法 第2版(Legal Quest)』(有斐閣・2018年) ・櫻田嘉章=道垣内正人編『国際私法判例百選[第2版]』(有斐閣・2012年) ・神前禎=早川吉尚=元永和彦『国際私法〔第3版〕』(有斐閣アルマ・2012年) ・澤木敬郎=道垣内正人『国際私法入門(第7版)』(有斐閣・2012年) ・道垣内正人『ポイント国際私法総論 第2版』及び『各論 第2版』(有斐閣・2007年,2014年) ・石黒一憲『国際私法 第2版』(新世社・2007年) ・横山潤『国際私法』(三省堂・2012年) ・櫻田嘉章=道垣内正人編『注釈国際私法(1)(2)』(有斐閣・2011年) ・『法の適用に関する通則法関係資料と解説』(2006年・別冊NBL110号) ・小出邦夫編著『逐条解説・法の適用に関する通則法』(商事法務・2009年) ・小出邦夫『一問一答新しい国際私法 法の適用に関する通則法の解説』(商事法務・2006年) ・神前禎『解説 法の適用に関する通則法』(弘文堂・2006年) その他の文献はレジュメ等で指示する。 その他の参考資料はレジュメ等で指示する。
課外学習等(授業時間外学習の指示)
授業のテーマに関連する教科書を読むと共に、レジュメを読み、指定された裁判例及びその評釈を読んだ上で、レジュメに挙げられた質問について考えて来ること。
注意事項
今学期は、防疫上の観点から、Zoomを用いた遠隔授業を行う。詳細については、アナウンスで連絡する。
授業開講形態等
遠隔授業(オンデマンド型)で行う場合の追加措置