学部・大学院区分
Undergraduate / Graduate
法・専学
時間割コード
Registration Code
9310100
科目区分
Course Category
法律基本科目(必修)
Basic Law Courses
科目名 【日本語】
Course Title
憲法基礎Ⅰ
科目名 【英語】
Course Title
Constitutional Law I
担当教員 【日本語】
Instructor
本 秀紀 ○
担当教員 【英語】
Instructor
MOTO Hidenori ○
単位数
Credits
2
開講期・開講時間帯
Term / Day / Period
春 月曜日 4時限
Spring Mon 4
対象学年
Year
1年
1
授業形態
Course style
演習
Seminar


授業の目的 【日本語】
Goals of the Course(JPN)
憲法における「統治機構」領域の法知識を涵養し、これをもとに批判的に検討・発展させていく創造的な思考力を養い、事実に即した具体的な問題解決に必要な法的分析・議論能力の育成をはかる。
国の最高法規である憲法は、近代憲法においては基本的人権の保障をはかるために国家権力=統治機構を統御することを根本理念とする。したがって後続する「憲法基礎Ⅱ(人権)」と一体のものとして履修することが不可欠である。
授業は、近代憲法における統治機構編成原理の基礎、その現代国家における変容、国民主権と国民代表といったテーマで原理的知見を得た後、国会・内閣・財政・司法・地方自治の順に展開する。内容は既存の学説、法令及び判例を理解するというよりも、法曹に求められる資質としての問題発見的あるいは問題提起的姿勢を育むものとする。これらを通じて、統治機構に関する周辺諸科学や論壇の議論と憲法学の理論との差異を検証しながら、実践的な思考力を修得させることを目的とする。
なお、本講義は、「法科大学院における共通的な到達目標」を踏まえつつ、具体的講義内容を設定している。
授業の目的 【英語】
Goals of the Course
到達目標 【日本語】
Objectives of the Course(JPN)
(1)憲法の基本原理と基本概念を理解できる。
(2)具体的な裁判や政治問題との関係で統治機構の領域における憲法問題を法的に考えることができる。
(3)統治機構に関する判例・慣例・学説を正確に理解し、それらを批判的かつ発展的に考察することができる。
到達目標 【英語】
Objectives of the Course
授業の内容や構成
Course Content / Plan
※講義日はTKCシステムを参照のこと。

1 統治機構の基礎知識
※法情報ガイダンス
(1)「立憲的意味の憲法」の意義を理解する。
(2) 統治機構に関する基本的考え方と,日本国憲法の定める統治機構の特徴を理解できる。
(3)「司法審査と民主主義の関係」という論点を踏まえて、日本国憲法の下で裁判所が果たすべき役割を理解できる。

2 国民主権・権力分立とその現代的変容
(1) 国民主権の意義を踏まえて,日本国憲法における民主主義のあり方を理解できる。
(2) 日本国憲法の条文との関係で権力分立の意義と機能を理解できる。
(3) 近代立憲主義とその現代的変容という論点を踏まえて,権力分立の問題を理解できる。たとえば、行政国家段階に特有な憲法問題について。
(4) 政党の法的性格と機能を憲法との関係で理解できる。

3 国民代表と民主政
(1) 国民代表の観念の歴史的展開を踏まえて,日本国憲法の条文を理解できる。
(2) 国民代表に関する学説の分岐を理解できる。
(3) 比例代表選出議員の失職制度を理解・評価できる。
(4) 日本の政治状況を踏まえて,直接民主制の功罪を理解することができる。

4 参政権と選挙制度
(1) 参政的権利の意義を統治機構との関係で理解できる。
(2) 選挙制度に関する基本概念を現実の政治との関係において理解できる。
(3) 投票価値の平等の問題について,その問題の所在と判例法理を理解できる。

5 国会の地位
(1) 国権の最高機関に関する解釈の対立を国政調査権の範囲との関係で理解できる。
(2)「政治的美称説」の意義と問題点を,近年の憲法学説や政治学からの批判を踏まえて理解できる。
(3) 唯一の立法機関に関する解釈論上の問題を理解できる。

6 国会の組織と権能
(1) 国会の組織と権能に関する憲法条文の構造を,統治機構の全体像に関する理論的把握の上に理解できる。
(2) 二院制の意義と問題点を比較憲法的知見を踏まえて理解できる。
(3) 国会議員の特権の意義と解釈論上の問題を理解できる。

7 憲法における行政権
(1) 行政の概念を歴史的かつ理論的に理解できる。
(2) いわゆる「控除説」の意義と問題点を理解できる。
(3) 内閣制度改革を踏まえて「統治」と「行政」を区分する議論の問題提起の意味とその問題点を理解できる。

8 議院内閣制と内閣の権能
(1) 議会統治制・大統領制・議院内閣制の違いを歴史的・理論的に理解できる。
(2) 日本国憲法や内閣法の規定を,議院内閣制に関する原理論を踏まえて理解できる。
(3) 議院内閣制の本質に関する議論を踏まえて,衆議院の解散に関する解釈論上の論点を理解し,学説を整理することができる。

9 司法権の範囲・限界
(1) 司法権の概念と法律上の争訟の意味を,最高裁判例を踏まえて理解できる。
(2)「板まんだら事件」最高裁判決を正確に理解できる。
(3) 統治行為論や部分社会論など,司法権の限界に関わる問題を理解できる。

10 裁判所の組織・権能および司法権の独立
(1) 裁判所組織や裁判官の任免・再任に関する基本事項を理解できる。
(2)「法廷メモ」判決を裁判の公開との関係で理解できる。
(3) 司法権の対外的独立と体内的独立の両方の意義について,具体的事件を踏まえて理解できる。
(4) 裁判官の身分保障の意義を立憲主義の理念を踏まえて理解する。

11 違憲審査制と憲法訴訟(1)
(1) 違憲審査制の諸類型(アメリカ型とドイツ型)の異同を理解できる。
(2) 主に憲法9条に関わる憲法裁判を素材にしながら、「条約の違憲審査」や「憲法判断回避の準則」等の憲法訴訟の技術論を違憲審査制度との関係で理解できる。

12 違憲審査制と憲法訴訟(2)
(1)「立法不作為の違憲確認訴訟」に関する判例と学説の考え方を、具体的な事案に即して理解できる。
(2) 司法消極主義と司法積極主義の意味を理解できる。
(3) 日本の違憲審査制の特性を理解できる。

13 財政と税制
(1) 財政民主主義と租税法律主義の意義と法解釈上の論点を理解できる。
(2) 予算に関する法的論点を実務上の観点を踏まえて理解できる。
(3) 憲法89条の「公の支配」に関する解釈論が理解できる。

14 地方自治と地方分権
(1)「地方自治の本旨」の意味を具体的事案との関係で理解できる。
(2) 条例制定権の範囲に関する解釈論上の問題を理解できる。

15 裁判における統治機構論の課題
講義で学んだ統治機構分野の基礎知識を具体的な事案の解決に生かす方法について、自分なりに検討できる。

16 まとめ
全体に関する最終テストを行う。
履修条件・関連する科目
Course Prerequisites and Related Courses
履修条件:特になし。
ただし、憲法の統治機構を理解するためには、政治の現実に関心をもつことが不可欠である。とりわけ、最近の政治動向は、統治機構論のネタの宝庫といってよい。(ネット情報だけでなく)新聞等を読む癖をつけてほしい。
また、日本の戦後政治史の知識に自信のない者には次の書物を薦める。もちろん、他の書物でもよいので、戦後政治史に関する基礎知識を学習しておくこと。
・石川真澄・山口二郎『戦後政治史 第4版』(岩波新書、2021年)
・小野耕二『日本政治の転換点 第3版』(青木書店、2006年)

関連する科目:憲法基礎Ⅱ、憲法演習など
成績評価の方法と基準
Course Evaluation Method and Criteria
レポート(1回)10点、小テスト(2回)各10点、学期末試験60点、平常点(発言・授業態度)10点とする。
到達目標(1)について:小テスト・平常点
到達目標(2)について:レポート・平常点・学期末試験
到達目標(3)について:レポート・学期末試験

成績評価(合否判定及び成績の区分)は、名古屋大学法科大学院が教育課程方針に基づいて策定した評価基準に従って行う。
教科書・テキスト
Textbook
芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法(第7版)』(岩波書店、2019年)
※すでに同書第6版を持っている人は、それを用いてもよい(授業では、第7版と同様の便宜を図る)。
参考書
Reference Book
長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿編『憲法判例百選II(第7版)』(有斐閣、2019年)

なお、芦部『憲法』と対照しながら読むと、憲法の学習が進むと思われる教科書として、以下の3点を推奨する。
・浦部法穂『憲法学教室 第3版』(日本評論社、2016年)
・辻村みよ子『憲法 第7版』(日本評論社、2021年)
・高橋和之『立憲主義と日本国憲法 第5版』(有斐閣、2020年)
課外学習等(授業時間外学習の指示)
Study Load(Self-directed Learning Outside Course Hours)
TKC教育支援システムの「カリキュラム」の各講義回の「予習案内」や「復習課題」に記載してある指示に従うこと。
注意事項
Notice for Students
学部等において憲法を履修した者は、これまでの学習内容を点検しておくこと。
憲法を初めて学習する者には、簡単な入門書として、以下の2冊を推薦する(いずれか1冊を、たとえ内容が十分に理解できなくても、とりあえず開講までに一通り読んでおくとよいだろう。同じ入門書とはいっても、この2冊は傾向が異なるので、両方読むと、より一層理解が深まってさらによい)。
・渋谷秀樹『憲法への招待 新版』(岩波新書、2014年)
・浦部法穂『憲法の本 改訂版』(共栄書房、2012年)

名古屋大学および同法学研究科におけるCOVID-19問題についての指針等を随時参照すること。
授業開講形態等
Lecture format, etc.
授業開講形態(対面遠隔併用で実施する授業一覧)は、名古屋大学法科大学院ホームページの「News」に掲載します。URL:https://www.law.nagoya-u.ac.jp/ls/
※履修登録後に授業形態等に変更がある場合には、TKCシステム又はNUCTの授業サイトで案内します。
遠隔授業(オンデマンド型)で行う場合の追加措置
Additional measures for remote class (on-demand class)
遠隔授業はTKCシステム及びZoomで行う。教員への質問方法、学生同士の意見交換の方法は次のとおりとする。なお、教員より別の指示がある場合は、その指示に従うこと。
・教員への質問は、電子メールで行うこと:moto*law.nagoya-u.ac.jp(*を@に置換)
・授業に関する受講学生間の意見交換は、TKCシステム又はNUCT機能「メッセージ」により行うこと。
(※担当教員がNUCTの「フォーラム」機能を追加設定した場合は「フォーラム」も利用可。)