授業の目的 【日本語】 Goals of the Course(JPN) | | 市民にとって身近な法律である消費者法は、多発する消費者被害の多様化・複雑化に伴ってその姿を年々大きく変えてきている。また、立法の理念も、消費者の「保護」から自立へ向けた「支援」へとその軸足を大きく移してきている。
本講義では、このような状況をふまえたうえで、現在発生している消費者問題、さらに将来における消費者法のあるべき方向性を、単なる「トピック」としてではなく「体系」的な視点から多角的に検討する力を身につけることを目的とする。 |
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授業の目的 【英語】 Goals of the Course | | The purpose of this lecture is to acquire the ability to consider the current consumer problems and the future direction of consumer law from a "systematic" perspective. |
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到達目標 【日本語】 Objectives of the Course(JPN) | | ① 消費者法が生成されてきた歴史とその社会的背景をふまえて、具体的な消費者立法の内容とその変遷、さらに各立法の相互関係について説明することができる。
② 具体的な消費者問題について、その解決を図るための基本的な知識を修得するとともに、理論と実践の双方の観点から、学説や裁判実務の動向をふまえて、適切な紛争解決の方法を選択することができる。
③ ①・②を前提として、消費者法の有する現在の課題を把握したうえで、現在および将来における消費者法のあり方を多角的に考察し、その内容を説明することができる。 |
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到達目標 【英語】 Objectives of the Course | | 1. Based on the history of consumer law and its social background, you can explain the the concrete contents of consumer legistration, its transition, and the interrelationship of each legistration.
2. You can acquire besic knowledge for solving concrete consumer problems. And from both theoretical and practical perspectives, you can select the appropriate dispute resolution method baced on trends in theory and court practice.
3. Baced on the above Number 1 and 2 , you will consider the current and future consumer law from various angles, and explain these contents. |
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授業の内容や構成 Course Content / Plan | | 第1回 ガイダンス / 総論① 「消費者法」とは何か
「消費者法」とは、そこに包含される法律が多岐にわたっていることから、よく聞く言葉であるにもかかわらず、その内容は茫漠としてつかみにくい。そこで、まず、「消費者法」という分野で取り扱われる内容の全体像を概観する。
第2回 総論② 消費者問題の現状と歴史的背景、消費者行政・消費者教育のあり方
わが国において、消費者問題が明確に意識されるようになったのは1960年代のことであるが、現在の消費者立法は、いわば消費者被害のうえに作られたものであるといっても過言ではない。こうした消費者被害を防止するためには行政の役割が重要であるが、必ずしも十分に機能していない。また、被害を減少させるためには、消費者教育を充実させていく必要があろう。そこで、本講義では、消費者法の理解を深めるために、消費者問題の現状と歴史を振り返りつつ、消費者行政・消費者教育の展開を確認することにする。
第3回 総論③ 消費者法の体系
第1・2回の授業でもとりあげるように、「消費者法」は民事・刑事双方の幅広い分野にわたる法律を包含するものである。そこで、それらの法律が相互にどのような関係をもっているかを検討し、「消費者法の体系」を明らかにする。
第4回 総論④ 消費者・消費者契約とは何か
「消費者」・「事業者」とは、可変的・相対的概念である。したがって、「消費者」あるいは「消費者契約」といっても、その外延を画することは、きわめて難しい。そこで、本講義では、「消費者」・「消費者契約」の内容とその特性について考えてみることにしたい。
第5回 各論① 契約締結過程・内容の適正化
消費者法の中心を占めるのは、消費者契約をめぐる法制度である。とりわけ、契約締結過程あるいは締結された契約内容をめぐるトラブルに対応する法整備の動きが加速度的に進んでいる。そこで、契約締結過程の勧誘にかかわるトラブルにおける民法法理の適用の限界を把握したうえで、特別法における勧誘規制のあり方について、横断的に検討する。
第6回 各論② 消費者契約法(1):契約取消権
前回の授業をふまえて、消費者契約法の契約取消権について、その改正へ向けた動きもふまえつつ、特定商取引法上の契約取消権と比較しつつ検討する。また、消費者契約法の総則に規定されている事業者・消費者の努力義務についても検討する。
第7回 各論③ 消費者契約法(2):不当条項規制
締結された契約やそれに付随する約款の内容が消費者にとって不利なものであるために、後日トラブルが発生することもしばしばである。そこで、本講義では、消費者契約法上の不当条項を無効とする規定を中心に、その改正へ向けた動きもふまえつつ、契約内容規制にかかわる法制度のあり方を検討する。
第8回 各論④ 特定商取引法(1):適用となる取引の概観
特定商取引法は、消費者紛争の約半分を占める店舗外取引を規制するもので、近年の数次にわたる法改正を経て、その実効性・重要性が高まっている。そこで、本講義では、特定商取引法上の規定について、その改正へ向けた動きもふまえつつ、クーリング・オフや中途解約権等の民事ルールを中心に検討する。
第9回 各論⑤ 特定商取引法(2):行為規制・民事的効力(クーリング・オフ、中途解約権等)
特定商取引法の適用対象となっている訪問販売等の取引類型における規制内容について、それぞれの特徴をふまえつつ、個別に検討する。
第10回 各論⑥ 消費者信用(1):消費者金融
消費者金融や割賦販売(クレジットを含む)など、いわゆる消費者信用については、法的な面にとどまらず、社会的・経済的に深刻な問題が生じている。特に、消費者金融については、2006年に貸金業法・出資法・利息制限法などが改正されたものの、まだまだその問題の解決にはほど遠い。そこで、まず、消費者金融について、法制度の変遷とその歴史的背景、さらに現行法の仕組みを押さえて、問題の本質の理解を試みる。
第11回 各論⑦ 消費者信用(2):割賦販売法
消費者金融と並んで、消費者信用に関する法制度のもう一方の核をなす割賦販売法についても、社会的問題の発生をふまえて、頻繁な改正がなされている。そこで、本講義では割賦販売法の内容を把握したうえで、とりわけ、いわゆるクレジット契約の場合に生じる、当事者以外を含む多数者間の取引関係を中心に、判例の動向もふまえつつ、法的問題点を考察する。
第12回 各論⑧ 若年者・高齢者と消費者保護
2022年4月から実施される成年年齢引下げに伴い、18・19歳の若年成年者の消費者被害の急増が懸念されている。逆に、「超高齢社会」であるわが国においては、近年、独居を含む高齢者のみで生活する世帯が増加していることもあり、とりわけ訪問販売・訪問購入、投資取引などを中心に、そうした高齢者をターゲットにした被害が増加している。また、高齢者は認知症等により判断能力を十分に有していない場合も少なくないが、そうした状況に対応すべく用意された成年後見制度も十全な形で機能しているとはいえない。そこで、若年者・高齢者の消費者被害の実態をふまえたうえで、その救済を図るための法制度のあり方を考えてみることにしたい。
第13回 各論⑨ 商品の表示・欠陥と消費者の安全
近時は、食品などの商品表示の偽装をめぐる問題も頻発している。また、商品そのものの欠陥による消費者被害も頻発している。前者に対応するための法律としては「景品表示法」、後者に対応するための法律としては、「製造物責任法」・「消費生活用製品安全法」などがある。さらに、生命・身体被害が生じる場合はもとより、それが生じない財産的な被害が生じる場合にあっても、現行の個別の法制度で救済を図ることが難しい事案(いわゆる「すき間事案」)が存在する。そのような状況に対応するために用意されているのが、「消費者安全法」である。
そこで、これらの法制度の内容と問題点を概観したうえで、被害を防止するための法制度のあり方を模索する。
第14回 各論⑩ 消費者団体訴訟
被害者にとって最も重要なのは被害の具体的な回復であろうが、実際には、加害者側の財産状況が原因となって、十分な対応がなされないことも少なくない。また、このような被害の拡大をくい止めるために2006年に導入された適格消費者団体による「差止請求」制度は、実際の運用にはまだまだ困難も多い。さらに、2013年には、「集団的消費者被害回復請求」制度の導入も実現した。そこで、本講義では、これらの「消費者団体訴訟」を通した消費者被害の防止や救済のあり方について検討する。
第15回 期末試験・講評 |
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履修条件・関連する科目 Course Prerequisites and Related Courses | | 履修条件は特に設けないが、当然のことながら、未修者コース1年次で学修する科目(特に民事系科目)を履修済みであるか、またはその内容を十分に理解していることを前提として授業を進行する。 |
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成績評価の方法と基準 Course Evaluation Method and Criteria | | 定期試験(70%)、授業参加度(毎回の授業での発言内容・参加姿勢)(10%)、授業中に実施する小レポートの提出(20%)
成績評価(合否判定及び成績の区分)は,名古屋大学法科大学院が教育課程方針に基づいて策定した評価基準に従って行う。 |
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教科書・テキスト Textbook | | 宮下修一=寺川永=松田貴文=牧佐智代=カライスコス・アントニオス『ストゥディア消費者法』(有斐閣、2022年刊行予定)
※このほか、消費者関連の法律が掲載されている「六法」を、必ず毎回用意すること。 |
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参考書 Reference Book | | 中田邦博=鹿野菜穂子編『基本講義 消費者法(第5版)』(日本評論社、2022年刊行予定)
河上正二=沖野眞已編『消費者法判例百選(第2版)』(有斐閣、2020年) |
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課外学習等(授業時間外学習の指示) Study Load(Self-directed Learning Outside Course Hours) | | 集中講義となるため、事前配布資料・参考文献に目を通して事前に十分な準備をしたうえで臨むことが望ましい。 |
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注意事項 Notice for Students | | 本授業では、主に消費者法の中の民事ルールのあり方についてとりあげるが、消費者法は、民法・商法の特別法でもあることから、これら2つの法律(特に民法)を一通り学修していることが求められる。各回の授業で取り上げるテーマに関連する民法・商法の知識を確認したうえで、授業に臨むこと。
また、本授業は、南山大学法科大学院で開講する「消費者法」の単位互換科目である。授業時間割及び試験実施方法等については、南山大学法科大学院の指示に従うこと。
なお、延べ4日間の講義で長丁場となるので、体調管理に十分留意すること。 |
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授業開講形態等 Lecture format, etc. | | 本授業は、南山大学法科大学院で開講する「消費者法」の単位互換科目であるため、南山大学の夏期集中講義期間に(9月6日~9日〔4日間〕)、南山大学法科大学院の教室で対面で実施する(ただし、大学の指示によりオンラインを用いて開講する場合がある)。
なお、注意事項でも述べたが、南山大学法科大学院の授業時間割に沿って実施するので、必ず確認すること。 |
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遠隔授業(オンデマンド型)で行う場合の追加措置 Additional measures for remote class (on-demand class) | | 仮に、新型コロナウィルス感染症の影響で、南山大学法科大学院の指示により遠隔授業で実施する場合であっても、オンデマンド型でなく、リアルタイム型で実施する。 |
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