授業の目的 【日本語】 Goals of the Course(JPN) | | 理学部生命理学科が目指す「基礎科学の研究をとおして、また科学的素養を活かして、社会の様々な分野で大きく貢献できる人材」を育成するために、極めて複雑なシステムである生命の物理化学的理解は必須である。この講義の目的は、生命の構成要素たる生体高分子(蛋白質分子および核酸)の構造・物性・相互作用・ネットワークを、物理化学の基礎原理として捉え、理解する基礎を身につけることである。さらに、最先端の生物学研究には、高度な生体計測・機器分析・データベースの利用が必須であるため、個々の実験手法の基礎知識をも把握していなければ、それらを有効に活用した独創的な研究はできない。
本講義は、生命理学の学習者を対象として、生体高分子(主に蛋白質と核酸)にかかわる物理化学の基礎をまず習得し(Ia)、その後、平衡や分子の安定性、化学平衡(Ia)について教科書に沿って概説する。なお内容はIbの反応速度論(Ib)、バイオインフォマティクスと計算生物学(Ib)に続く基礎となるものである。 |
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授業の目的 【英語】 Goals of the Course | | Department of Biological Science, School of Science, Nagoya University aims to educates a person, who can solve various challenges in a society by researches and knowledges of basic life sciences. For this purpose, deep and fundamental understanding about the complex network of huge number of components of living organisms in terms of physical chemistry and biophysics is necessary. This lecture guides an introduction of thermodynamics and physical chemistry of amino acids and other basic chemicals. |
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到達目標 【日本語】 Objectives of the Course(JPN)) | | 1.熱力学の3法則を理解できるようになる
2.エントロピー・エンタルピーおよびギブスエネルギーの基本的な計算が可能になる
3.化学平衡、解離定数の関係を理解し、ΔGの計算が不自由なくできるようになる
4.数値表を参考に、標準生成エンタルピーなどの物質の諸パラメーターが計算でき、物質の安定性が数値に基づいて比較できる
5.酸塩基平衡について理解し、所定の緩衝能を持つ緩衝液の組成を計算できる |
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到達目標 【英語】 Objectives of the Course | | 1. Understand the three laws of thermodynamics.
2. To be able to perform basic calculations of entropy, enthalpy and Gibbs energy
3. Understand the relationship between chemical equilibrium and dissociation constant, and be able to calculate ΔG without difficulty.
4. to be able to calculate various parameters of substances such as standard enthalpy of formation with reference to numerical tables, and to compare the stability of substances based on numerical values.
5. Understand acid-base equilibrium and be able to calculate the composition of a buffer solution with a given buffering capacity. |
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授業の内容や構成 Course Content / Plan | | 以下の内容について、教科書に準じて解説する。
001・物理化学の基礎(基礎概念) 第1-2回
002・熱力学第一・第二法則(1,2章) 第3-4回
003・相平衡~核酸・タンパク質の安定性~濃度と化学ポテンシャル~浸透圧(3章) 第5回
004・化学平衡~反応ギブスエネルギー~酸塩基平衡と緩衝液(4章) 第6-7回
005・理解度チェック(期末試験)
(以上廣明)
参考のためIbのシラバスについても掲載しておく。
001・生命過程の速度論、反応速度~アレニウスの式(6章)
002・速度式の解釈~反応ダイナミクス(7章)(以上兒玉(創薬))
003・生体高分子と相互作用~配列情報と構造と機能
004・バイオインフォマティクス(11章)(以上太田(情報)) |
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履修条件 Course Prerequisites | | 高校の化学、物理、数学を理解していること。
ただし高校の物理の内容でも必要に応じて補足説明を行う。
この科目は原則Ia+Ibのセットで履修すること |
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関連する科目 Related Courses | | 基礎生化学Ia, Ib ~ IIIa, IIIb 基礎生物物理学Ib, 生物物理学Ia, 生物物理学Ib |
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成績評価の方法と基準 Course Evaluation Method and Criteria | | 期末試験 ならびに 最大4回実施する小レポート
第8回目の講義を、【教科書持ち込み可】として、物理化学、とくに基礎熱力学の理解力を問う筆記試験を行う。講義の進行ならびに学生の習熟度に応じて、予習を促すための小レポートを適時課すなどして、調整する。 |
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不可(F)と欠席(W)の基準 Criteria for "Fail (F)" & "Absent (W)" grades | | 履修取り下げ手続きなしで2本以上のレポート未提出、期末試験欠席の場合、欠席ではなく不可とする |
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参考書 Reference Book | | タンパク質の立体構造入門-基礎から構造バイオインフォマティクスへ(藤博幸編・講談社)
Ia/Ib共通
バイオサイエンスのための物理化学(猪飼篤監訳・東京化学同人)※おすすめ
はじめてのバイオインフォマティクス(藤博幸編・講談社)
Ib |
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教科書・テキスト Textbook | | アトキンス生命科学のための物理化学 第2版(東京化学同人) Ia/Ib共通 |
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課外学習等(授業時間外学習の指示) Study Load(Self-directed Learning Outside Course Hours) | | 講義時間中は教科書の例題・章末問題は扱わないので、必要に応じてそれを解き、解法を身に付けることを推奨する。 |
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注意事項 Notice for Students | | 本講義の最終目標は、構造生物学を理解し、タンパク質立体構造情報に基づき創薬を行い、現在世界中を脅威にさらしている新型ウイルスの流行など、人類の危機にも立ち向かう生命科学者・創薬科学者の育成へと導くことである。物理化学は非常に重要な学問であるが、残念ながら非常に退屈である。しかし、2年次後期以降の高度な専門科学を深く正しく理解するために必須である。特に創薬研究には欠かすことができない。同時に、高度に抽象的であり、予習・復習をかかすと必ずつまづく。
指示された教科書の該当箇所の予習・復習に努めること。教科書の理解に必要な他の基盤的学問(化学・物理)および生化学の基礎知識についても、その習得に自主的に努め、さらに高度な理解を目指す「積み上げ型学習」を特に意識すること。 |
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他学科聴講の可否 Propriety of Other department student's attendance | | |
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他学科聴講の条件 Conditions for Other department student's attendance | | 生体分子の科学(化学・物理・生化学)を通じた生命現象の解明に興味を持つもの。または、将来創薬科学研究科・情報科学研究科の大学院を志望し、物理系薬学ないしバイオインフォマティクスに興味を持つもの。ただし新型コロナ肺炎感染防止の観点から講義室の定員により受講を制限する場合がある。 |
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レベル Level | | |
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キーワード Keyword | | ギブスエネルギー
自由エネルギー
エンタルピー
エントロピー
束一的性質
結合解離平衡
アレニウスの式
ル・シャトリエの法則
束一的性質 |
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履修の際のアドバイス Advice | | 基礎熱力学はともかく抽象的で理解しにくいにもかかわらず、将来、創薬や生命科学に関わるうえで極めて重要である。ここで我慢できるかどうかですべてが決まります。 |
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授業開講形態等 Lecture format, etc. | | 原則対面方式とする。新型コロナウイルス肺炎感染拡大防止に配慮し、オンデマンド講義を適宜活用する。 |
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遠隔授業(オンデマンド型)で行う場合の追加措置 Additional measures for remote class (on-demand class) | | 講義PDFをTACTにて公開。特別に配慮を希望する学生からの要望に応じ、講義音声のTACTへのアップロードを検討する。 |
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