学部・大学院区分
Undergraduate / Graduate
学部
時間割コード
Registration Code
0045220
科目名 【日本語】
Course Title
地域医療フィールドワーク入門
科目名 【英語】
Course Title
Introduction to the Field Work Searching for the Community Based Medicine
使用言語
Language Used in the Course
担当教員 【日本語】
Instructor
梅村 絢美 ○ 宮地 純一郎
担当教員 【英語】
Instructor
UMEMURA Ayami ○ MIYACHI Junichiro
単位数
Credits
2
開講期・開講時間帯
Term / Day / Period
Ⅳ 金曜日 2時限
IV Fri 2


授業の目的 【日本語】
Goals of the Course [JPN]
本授業は,”コミュニティ”なき時代の医療のローカリティ=社会的文脈を,フィールドワークを通じて探求することを目的としている。人,モノ,情報,資本,病原体,診療やコミュニケーションの手段・媒体が地理的・行政的な境界を超えて目まぐるしく流動する今日,地域医療は,どのようにとらえることができるだろうか? 本授業では,地域・コミュニティという語が背負ってきた従来の意味をいったん手放し,既存の枠組みを越境していく人・モノ・情報・資本・コミュニケーションのフローやネットワーキングのなかにある人びとの日常的実践に注目する。具体的には,「住所がない」人びとにとっての病いの経験とそれに対するケアをフィールドワークにもとづき丹念に記述することを通じて,上記問いに接近していく。これは,周縁から全体をまなざすという文化人類学的思考に特徴的なものでもある。この上で,病いの経験や診療を人びとの生活の場において捉え直し,それを広義の地域医療として構想することを目論む。
授業の目的 【英語】
Goals of the Course [ENG]
This lecture aims to explore the locality of medical practices in an era without community through anthropological fieldwork. Today, people, goods, information, capital, ways of medical practices and communication flow rapidly across geopolitical boundaries, it is necessary to reconsider the premises of community-based medicine based on geography and administrative divisions. In this class, we will let go of the traditional meanings of "region" and "community" in the stale meaning and focus on the everyday practices in the flow and the networking of people, things, information, capital, and communication. It can also include places that are based on communal “face to face” relationships that cannot be collected into the dualism of public/private. Based on this, we aim to localize the experience of illness and medical practices in the people's living world, and to envision the locality of medical practices found there, i.e., the social context, as community-based medicine in the broad sense.
授業の達成目標 【日本語】
Objectives of the Course [JPN]
1.フィールドワークにおける他者との偶発的な出会い・対話を通じて、自身の前提や思い込みを相対化することができる
2.知識や情報といった馴染みある枠組内で想定されうる「自分の知りたいこと」以上のことを、フィールドワークを通じて学び取ることができる
3.心身に生じる諸問題とその背景を、生活の場における具体的な文脈や社会文化政治経済的な階層構造のなかでとらえ、克服のための具体的方法について、医療の枠組みにとどまらず他の領域と地続きに検討することができる
4.生活の場における「顔」のみえる関係にもとづく実践がもちうる可能性について思考することができる
5.(医)学生として大学で学ぶということや医師という職業が社会においてもつ意味について、フィールドにおける対面的な関係のなかで考えることができる
授業の達成目標 【英語】
Objectives of the Course [ENG]
授業の内容や構成
Course Content or Plan
 上記目的をふまえ、本授業では、名古屋市内で生活困窮者に対し生活医療支援をおこなうNPO法人「ささしまサポートセンター」(旧笹島診療所)のボランティアの医師・看護師・スタッフおよび利用者の活動を対象としたフィールドワークをおこなう。そこで手がかりとするのが、フィールドワークという文化人類学が培ってきた手法である。人類学的なフィールドワークは、「馴染み」ある空間から異世界へと飛び出し、他者との具体的な交渉の過程から、他者のみならず他者を通じて自己を理解する実践である。そこで求められるのは、既存の枠組みを対象に当てはめるだけの表層的な共感・他者理解ではなく、現場で生じる「想定外」の出来事や偶発的な出会いのなかで対話を繰り返し、当事者として現地の人びとと関わり「ともに」考えるという共同作業である。ありとあらゆる土地から炊き出しや生活医療相談に集う人びと(住所がない人も少なくない)と医療者、そして縁あって本授業をきっかけに参与することとなった受講生が、どのようなローカリティ=社会的文脈において活動をしているのか、そこに集う当事者のひとりとして立ち会い、対話し、考え、エスノグラフィを「ともに」書くことを本授業の最終目的とする。
 「生活の場における苦悩とそのケアとは?」「医師の存在理由とは?」「(医)学生として大学で学ぶことは社会においてどんな意味をもちうるのか?」といった問いについて、あるいはこうした問いそのものの是非や、フィールドワークを通じて浮上するたくさんの疑問について、フィールドで「ともに」考えようとする意欲ある学生の受講を歓迎します。
 受講にあたり、予備的な専門知識を問うことはありませんが、文化人類学・社会人類学に関連する諸科目および前期開講の「医療人類学」を受講することを強く勧めます。

1. “方法論”としての地域医療:周縁から医療のローカリティ=社会的文脈をとらえなおす
2. フィールドワークと偶発性・自己変容:フィールドワーカーの“当事者性”
3. コミュニケーションとしての民族誌(ethnography):一人称で考え書くことがひらく世界
4. 医師による「社会的処方」は支配か?ケアか?:フィールドで考えることの意味
5. ささしまサポートセンター職員による講義と活動についての説明
6. フィールドワーク事前準備発表
7. フィールドワーク①(木曜生活医療相談)
8. ディスカッション
9. フィールドワーク講義
10.講義「ある当事者さんのお話」
11.フィールドワーク②(越冬活動支援)
12.フィールドワーク③(越冬生活医療相談)
13.授業内フィールドワーク報告会
14.エスノグラフィを書く
15.交流発表会(ささしまサポートセンターにおける発表)

○授業時間外・学外の実習について
 本授業は、フィールドワークを基盤とするというその特性上、学生自らフィールドに赴き現場で学びとることを主眼としています。したがって、上記の授業構成は、1〜5回目をのぞき、必ずしも時間割上の時間・教室で行われるわけではないことをあらかじめご承知おきください。詳細は、授業内で説明します。

○フィールドワーク
 ささしまサポートセンターの活動のうち、木曜生活医療相談、巡回相談(アウトリーチ)、越冬生活医療相談において、3名程度の班で合計3回ずつ実施します。木曜生活医療相談は、毎週木曜日の夕方、生活困窮者に対する炊き出し会場で実施されるもので、ボランティアの医師・看護師による診察・生活相談を主とした活動です。巡回相談は、第二日曜の午前に行われます。名古屋市内の公園や高架下、河川敷で生活している人たちを訪れ、生活医療相談を行う活動です。越冬生活医療相談は、年末年始(12/28-1/3)の大規模な炊き出しとともにおこなわれます。フィールドワークにあたり、参与観察の手法やフィールドノートの書き方はもとより、対象に関する基本情報と注意事項について、よく理解した上で臨むようにしてください。
以下①②③からそれぞれ最低1回ずつフィールドワークに参加すること。
①木曜生活医療相談…10/30,11/6,11/13
②越冬準備活動12/28
③越冬生活医療相談…12/29-12/31

・授業として教員が同行をするフィールドワークは上記のみですが、スタッフに相談の上、センターの諸活動(子どもに対する学習食事支援、グループホーム等)に自主参与することも可能です。
・フィールドワーク中の写真撮影およびフィールドワーク中に見聞きした一切の情報について、SNS等のオンラインコミュニケーションを通じて授業関係者以外に発信することを厳禁します。
・ささしまサポートセンターの活動についての詳細は、以下HPを参照のこと。
https://www.sasashima.info

○エスノグラフィについて
 学期末レポートとして、フィールドワークにもとづく「エスノグラフィ」を作成します。このエスノグラフィは、単なる報告書ではなく、調査対象者や他の受講生とのディスカッションをふまえ、複眼的に構成されることを期待します。提出されたエスノグラフィは、ささしまサポートセンターで発表をし、その際の反応や考察を加筆した上で、製本してセンターに寄贈します。自分が見た現実を適切な表現において書き、「他者と共有」するというコミュニケーションの過程で、自身がみた現実が他者からどのように受け止められうるのか、意識しながら振る舞い、それを書き残すという体験にチャレンジしてみましょう。
履修条件・関連する科目
Course Prerequisites and Related Courses
受講にあたり、予備的な専門知識は問いませんが、常に主体的に思考を働かせ、積極的に「問い」を発し続ける意欲的な受講姿勢を求めます。
成績評価の方法と基準
Course Evaluation Method and Criteria
フィールドワークの参与姿勢(20%)、フィールドノートの記述内容(20%)、プレゼンの内容・姿勢(20%)、学期末レポート(40%)にもとづき総合的に評価します。
教科書
Textbook
受講生の関心や理解度に合わせ関連する資料・文献を適宜配布・紹介します。
参考書
Reference Book
ジェラード・デランティ、2006(2003)、『コミュニティ:グローバル化と社会理論の変容』、NTT出版。
イヴァン・イリイチ、2015(2009)、『コンヴィヴィアリティのための道具』、ちくま学芸文庫。
佐藤和久・比嘉夏子・梶丸岳、2015、『世界の手触り:フィールド哲学入門』、ナカニシヤ出版。
松本俊彦、2021、『誰がために医師はいる:クスリとヒトの現代論』、みすず書房。
小川さやか、2019、『チョンキンマンションのボスは知っている:アングラ経済の人類学』、春秋社。
二文字谷脩、2022、『トーキョーサバイバー』、うつつ堂。
柏木ハルコ、2016-2022、『健康で文化的な最低限度の生活(1)〜(11)』、小学館。
課外学修等
Study Load (Self-directed Learning Outside Course Hours)
授業として最低2回のフィールドワークを求めますが、それ以外にも積極的にフィールドワークに出かけることを強く勧めます。
注意事項
Notice for Students
本授業は学外フィールドワークを主眼として実施されます。調査対象に対する不義理な態度、無責任な言動、無断欠席や遅刻、SNS投稿等があった場合には、その時点で受講をとりやめてもらいます。
本授業に関するWebページ
Reference website for this Course
担当教員からのメッセージ
Message from the Instructor
実務経験のある教員等による授業科目(大学等における修学の支援に関する法律施行規則に基づくもの)
Courses taught by Instructors with practical experience
授業開講形態等
Lecture format, etc.
A-1)対面授業科目(対面のみ)
対面授業の場合の講義室は、時間割B表(名大ポータル>教養教育院ページ掲載)を確認すること。